2020年6月30日火曜日

薄田窯に薄田いとさんを訪ねました。Vol.001


今日は久々に益子を訪ねました。薄田窯の商品受け取りと新商品の撮影が目的でした。ホームページを作った時に伺って以来なので、道順もとうに忘れていました。全く道がわからずにまた、細い道で迷路のようになり幾度も道順を聞きながらになりました。
彼女の作品は、信楽の白土をつかい泥漿と釉薬で線文の装飾をしています。
いっちん技法です。
彼女の経歴書にこんな文章が載っています。
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薄田窯は昭和45年、父・薄田浩司が始めた窯元です。
それから50年、現代の生活にあった、
シンプルであたたかみのある器を、
小さな工房でひとつひとつていねいに作っております。
手作りのため、同じデザインや釉薬でも色の出方などがそれぞれに異なります。
手作りならではのぬくもりと風合いを味わっていただけたら幸いです。
工房はやきもの通りから少し入った場所にあります。
益子にお越しの際はぜひお立ち寄りください。
薄田いと
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彼女の作品は、シンプルです。
美術工芸品というよりも普段使いの器のようです。
使いやすくて手作りの風合いがあり、癒されるような色味といっちんの文様が、楽しく可愛らしい。
柳宗悦の唱えた民藝運動に「用の美」があります。
私の知る津軽のあけび蔓細工や津軽こぎん刺し、津軽塗、津軽びいどろなどもそれが該当するのでしょうか。
昨日、薄田窯のあとに神谷正一氏の奥様とご主人正一氏のことをお話ししましたが、ご自分のことを「職人」と捉えていたといいます。
作家ではないわけです。
 
益子のお店を覗くと普段使いの湯飲み茶碗やご飯茶碗があります。
簡単な形と釉薬で模様をつけています。
ひとつ500円位の値付けになるでしょうか。
見た目にもそんな値段だろうかと思われます。
益子では浜田庄司氏や島岡達三氏は人間国宝となり素晴らしい作品を生み出しています。唸るような存在感ある陶器であり、惚れ惚れとします。さらに遅れて加守田章二の名も聞きます。
神谷正一氏は島岡達三氏の湯飲みやコーヒー碗を作っていました。
彼の作品は、師の島岡達三氏のものと形が似ています。
独自に梅や麦菱などの模様を考案していますが、そこには島岡氏の影響を見ることができます。
いまだに神谷正一氏の作品を求められる方々が多く居られます。
彼は紛れもない作家として生きました。
 
薄田いとさんは、作家です。
安価な日常遣いの作品を作られている作家です。
機能的でシンプルないっちん模様で飽きの来ない器です。
粘土の量から値段も安価ですが、職人のつくる店頭に並ぶものとは異なります。
長年陶芸家の方々の作品を見てきました。
そこには意匠もちがければ、美の感性も異なりそれぞれの個性を見ることができます。一時益子全盛の頃に挙って作家を目指して陶芸家が集まりました。
禄にロクロも引けない者たちが作家としてデビューしそのような値付けをしました。益子はそれだけ寛容な土地柄だったと言えるでしょうか。
しかし、職人で育った方々の中にも作家としてデビューした人達もいたようです。
 
通販を始めて少し経った頃に共販センターの展示会場で作家の方の個展を見ました。
それは益子焼らしい釉薬に民芸調の形でそれなりの重厚な印象を持った作品が並んでいました。しかし、私の目には、美しくは見えませんでした。
それなりの値付けがされていました。
しかし、不思議でした。
浜田庄司やそれらに連なる著名な方々の作品にみる美しさが感じられないのです。
初めての経験でした。
これだけ素晴らしい釉薬を使ってそれらしく繕っているのに。
あとで日下田藍染工房の日下田氏にその疑問を投げかけました。
具体的な言葉はありませんでしたが、「あの方は職人だった人だからね。」と話されました。
神谷正一氏が話してくれた浜田庄司の言葉に「陶芸は、形が優れていなければいくら綺麗な着物を着せても美しくはならないよ。」というものでした。
ダンスもそうです。
美しいトーンがなければ、踊りにはなりません。
焼き物も同じなのでしょう。
美しい形に着物を着せる。即ち釉薬をかけることになります。
要は、私の言いたいことは、店頭に並ぶ500円の飯碗であっても1,000円の湯呑であっても職人の美と作家の持つ感性の美は異なるというものです。
職人であってもその美を持つ方もいるでしょう。
しかし、一目で500円の湯呑と飯碗と分かるものは、駄物と言えるのではないでしょうか。
私は、浜田庄司氏の作る碗は、同じ土、同じ釉薬で同じ窯で焼いても異なるだろうと思います。 
 
薄田いとさんの商品は、安価です。
土の量や焼き方からいえば、適当な値付けがされています。
しかし、美しい小皿、小鉢、皿と生活具であっても美しいものを目指して欲しいと思っています。
彼女は、作家ですから。
芸術家がそれでは食えないよという言葉がありますが、骨身を削って美しいものを作って欲しいと思います。
彼女のいっちんは、シンプルで美しい器です。
ご覧ください。
近々にホームページにアップします。
詳しくは手仕事専科までお尋ねください。
 
手仕事専科 http://tesigotosenka.com 
左)マルチカップ φ10cm×h6.5cm
右)フリーカップ φ8.5cm×h9cm
左上)角丸四角皿 10.5×10.5×h1.5cm9
右上)丸小皿 φ9.5cm×1.5cm
下)小判形皿 4×10×2cm
薄田いとさんです。
素敵な方です。
薄田窯

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